ザルに盛られた新鮮なほうれん草


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ほうれん草について




いつも深く考えることなく食べているほうれん草ですが、ちょっと知識を持っていることで、深みを感じるほうれん草になります。




ほうれん草は、アカザ科になります。

栄養価が非常に高く、鉄分やビタミンに富んだほうれん草を媚薬としての効果があると考えたのは、漢方の国、中国の人々です。
増血作用があるということで、強壮の目的で目をつけたわけです。


独特のアクの強さが気になるところですが、ちなみに、ほうれん草のシュウ酸は、毎日1キログラムも食べるのでない限り、まったく体内に及ぼす影響はないとのことです。




状態が良いものは葉の色が濃く、みずみずしく張りのあるものです。
下のほうから葉が密生していて葉面積の広いものほど良いです。


カロチン、ビタミンA、ビタミンC、鉄分、カルシウムなどを豊富に含み、緑黄色野菜の王様と呼ばれます。春から夏にかけてのものよりも冬のほうれん草のほうが、栄養価が高いとされています。



ビタミンAは、皮膚や粘膜、視力を健康に保つ働きをしてくれ、逆に不足してしまうと、骨や歯の発育が悪くなり、体の抵抗力が低下してしまうので、成長期のお子様におススメする野菜です。





あくが強いのはシュウ酸の影響です。




このため、ほうれん草の生食はいけないとされてきましたが、多量に食べなければ害はないということです。

ビタミンCに関してはほうれん草5グラムでレタス100グラム分と同量含まれています。




鉄分補給を助けてくれるビタミンCですが、ゆでると、3割くらいは減ってしまいます。それでもほうれん草の場合は元々のビタミンCの含有率は高いので、全然大丈夫です。


シュウ酸は体内でカルシウムと結合してシュウ酸カルシウムとなり、結石の原因になるとされていますが、生で大量に食べるのでなければ問題ないです。




基本的にはゆでるなどしてあくを抜く必要がありますが生食も恐れることはないです。




また、クロロフィル(葉緑素)を多く含むので、コレステロール値を低下させて血中の有毒物を取り除いてくれる働きもしてくれます。




ほうれん草の歴史




歴史も長く、アジアの西方、コーカサス地方の原産でペルシャ、イラン地方で古くから栽培されていました。
回教徒により東西に伝播したと考えられています。



ヨーロッパへは十一世紀に伝わり、十五世紀以降に広く普及しました。アメリカでは十九世紀に入ってから普及し、1915年頃からは缶詰加工の発達に伴って需要が伸び、大規模に栽培されるようになりました。



中国へは七世紀に伝わりましたが、日本への伝来ははるかに遅れ、ほうれん草に関する最初の記載は1631年、林羅山の『多識篇』です。
この頃に中国から初めて渡来したのは現在、在来種と呼ばれる東洋種で、ヨーロッパ系の西洋種は文久年間(1861~1864)にフランスから伝わりました。





品種の違い



「最近のほうれん草はどうも美味しくない。昔はもっと美味しかった」という声が年配の人から聞かれることがあります。それもそのはず、昔のほうれん草と今のものとは品種が違うのです。

ほうれん草には東洋種、西洋種、それに両者の雑種があります。昔のほうれん草は東洋種で葉が細く、先がとがっていて切れ込みが深いです。

根は鮮紅色で食べると甘いです。あくが少なくて歯切れがよいため、おひたしに適し、日本人の嗜好に合っていました。


それに対して現在主流となっている西洋種は葉が丸くて切れ込みが少なく、根も東洋種ほど赤くないです。品質は東洋種に劣り、あくが強く、大味で泥くさいと初めは評判が悪かったです。油炒めにすると気になりませんが、おひたしにすると格段の差が出るといわれています。


それなのになぜ良質の東洋種が減り、初めは嫌われていた西洋種が普及するに至ったのか。それには第二次世界大戦後の食生活の変化が大きく影響しています。

旬の感覚が薄れ、冬の野菜であるほうれん草を夏にも食べるようになりました。東洋種は霜にあたった頃が一番美味しいとされていて、夏の暑さには弱く、とう立ちが早いです。

需要に応えて一年中出荷するために、耐暑性が強く、東洋種よりも収量の多い西洋種を栽培する農家が増えたのです。
そして、西洋種の難点である味を改良するための東洋種との交配も行われるようになりました。

現在では純粋の東洋種はほとんどなく、冬場のほうれん草も交配種が多いといいます。

同じ雑種といっても東洋の血が濃いほど味がよいのは確かなので、昔の味を求める人は葉の切れ込みの深い、東洋種に近い形のものを選ぶとよいです。


このように、その時代にもまれて変化してきたものが、今のほうれん草です。

これからも、その時代の人々に合うように、変化してゆくのでしょうね。