修業時代には、煮物系の料理にあまり興味がなかったです。
まかない担当の時もほとんど作りませんでしたが
何年も料理を作っていくうちに煮物系を作る機会も増えていきました。
そうなってくると、凝りだしてきて、とても採算が合うものではなくなっていきました。
今ではやっとお客様におススメできる、TANTO屋にピッタリのシチューが作れるようになりました。
洋食というカテゴリーの中でも、たくさんの煮物系のメニューがあります。
TANTO屋でも、ビーフシチューは今や定番メニューの一つになっています。
他にもテールの煮込みなどもありますが、沢山の煮物系のメニューを作ってしまうと、小さな厨房が悲鳴を上げてしまいます。
ビーフシチューは一年中通しての定番メニューとして確立しているので、猛暑の真夏でもお構いなしに作っています。
『真夏に食べたいメニューではないな。』と思われるかもしれませんが、案外オーダーもいただきますので、作り続けています。
ビーフシチュー作りは手間暇はかかりますが、魅力があります。
色々な素材が水の力で一つにまとまり、火の力で刻々と変化してゆき、完成に近づいてゆく工程が好きなので、作っていても飽きることはありません。
このようにストレートな調理法で作っていきますので、素材に力がないとこの力は使えません。
完成するまでに、膨大な時間がかかるので、『圧力なべを使うと、時短になるのかな。』とおもって、圧力鍋を購入して試してみましたが、いつもの完成したものとは全く別物になってしまいました。
この原因は、煮込み中に、微量の水分が蒸発していたり、お肉に対して自然の摂理での火の入り方や入る時間も実は大切だということが検証してみて良くわかりました。
圧力鍋の調理方法には、『エキュメ』といって、調理の途中で灰汁(あく)や余分な脂分を取り除く作業ができません。
これは、理にかなった調理法ではないとも思います。
ということは、その煮込み料理のスープに灰汁や余分な脂分が混ざりこんでしまうということになります。
それから一切、ビーフシチュー作りに圧力鍋は使わなくなってしまいました。
圧力鍋調理法には、料理によって向き不向きがあるようです。
これからも地道にビーフシチューを作っていきたいと思います。