洋食


じゃがいも(馬鈴薯)について




じゃがいもはナス科になります。


ヨーロッパ圏で芋と言えばじゃがいもを指します。

普段の生活の中に根付いている「じゃがいも」も、昔、新大陸からヨーロッパ大陸に入った頃は『悪魔の作物』として嫌われていました。
完全に食用として認められるまでに要した時間は、なんと二百年です!


じゃがいもの原産地は中南米です。有史以前にチリからペルーに導入されて、当時繁栄していたインカ帝国では重要な食用の作物でした。

十六世紀になってインカ帝国を征服したスペイン人によって、はじめてヨーロッパに伝えられました。


当時の人間の感情を良くあらわしていることがあります。

それは、どんなことかと言いますと

花が咲いて、実を結んで増えていくのが作物としての常識として考えられていた時代でしたので、いもを切り分けて植えれば、どんどん発芽して増えていくじゃがいもは無節操な印象を人々に与え、キリスト教の教義に反する異端の作物とされたのでした。



イギリスにじゃがいもが伝わった時の衝撃的なエピソード




当時のイギリスの女王エリザベス一世の後押しもあって、テムズ湖畔にじゃがいもが沢山植えられました。

じゃがいもを世に広めるための大宴会が催された時、事件は起こりました。

この肝心な大宴会の時に、参加者全員が激しい下痢になってしまったのです。

その下痢の原因は、当時の料理人の仕業でした。

なんとその時の料理人たちはいもを捨てて、葉と茎だけを調理したのです。

『根っこなんか使えるわけはない』と すべての皿に葉と茎が盛られました。

結果、有害成分が体内に回り、下痢になってしまいました。

当然のことながら、この失敗はじゃがいもの普及を大きく妨げて、その事件以来二百年もの間、小花を咲かせ続けただけでした。




スペイン、フランスでの、じゃがいもエピソード




スペイン、フランスのルートをたどったじゃがいもも、はじめは全く人気が出ませんでした。

そんな時に、じゃがいもの救い主が現れます。名前は『オーギュスト・パルマンティエ男爵』といいます。

ルイ十六世の命令のもと、フランス国家におけるじゃがいも栽培の役目をおおせつかった男爵は、栽培に成功しました。

それから、有名なヴェルサイユ宮殿の庭や、ブローニュのセーヌ湖畔にじゃがいもの花が咲きみだれるまでになったのですが、市民は見向きもしませんでした。はじめなので、分からなくて当然です。

そこで、市民の関心を集める心理作戦を立てました。

どのような方法を取ったのかと言いますと、ブローニュのじゃがいも畑に、昼間は見張りを立てて警備にあたらせて、夜は監視を解くという方法をとりました。

それを見ていた市民のうちの何人かは、『そんなに大切なものなら・・・』と盗みに入りだしました。

その作戦の結果、パリ中に広まり、フランス国中に広まり、 食料飢饉の時に非常食となったといわれています。しかし、すごい大胆な作戦ですね。

じゃがいもの花は綺麗なので、ルイ十六世の上着のボタン穴の飾りにしたり、マリー・アントワネットの髪の飾りにもなりました。

フランス料理用語にパルマンティエという言葉がありますが、これは先ほどの男爵の功績をたたえたものから来ています。すごくノスタルジックな気分です。 


フランスのリーズナブルなレストランに行きますと、メインディッシュに、じゃがいものから揚げ『ポン・フリ』がたくさんついてきます。様々なエピソードがありながら、今ではじゃがいも好きの国民と言っても過言ではないです。


じゃがいもは表面につやと張りがあり、皮が薄くて形がふっくらとしているものが良いです。

皮がむけているものやしなびているものは古い証拠です。また、傷のあるもの、濡れているものは腐りやすいので買う時に注意してください。


よく、じゃがいもの芽を食べるとお腹をこわすと言われますが、これはじゃがいもの芽に毒性があるからです。

じゃがいもの表面には良く見てみますと『目』と呼ばれる凹んだ部分がらせん状に並んでいます。

この『目』から出る芽にはソラニンという有害物質が含まれていますので、よく取り除かないで食べると中毒を起こして、腹痛、胃腸障害、めまいなどの症状が出ます。

ですので、じゃがいもの目から芽が出たら要注意です。

じゃがいもは 零下1.5度で凍死してしまいますので、冬は保存方法に気を付けなければなりません。


じゃがいもは、炭水化物が主成分です。 意外にビタミンCが多いです。


食用以外では、アルコール、オブラートなどに使われています。


     
じゃがいが日本へ伝わったのは、十六世紀末に、天正年間にジャワのジャガタラからオランダ船によって
長崎に伝わったのが始まりとされています。


じゃがいもという名称は『じゃがたらいも』という呼び名が短縮されたものです。


また、いもの形が馬の首につける鈴に似ていることから、『馬鈴薯』とも言われています。


伝わった当初は、日本人の嗜好に合わなかったので、観賞用や飼料用として栽培されるくらいの規模でした。

食用作物として本格的な栽培がはじまったのは、明治から大正にかけてで、外国から優良種が導入されてからになります。

その後品種改良も進んで、今ではじゃがいもはなくてはならない野菜となりました。



じゃがいものそれぞれの特徴



数あるじゃがいもの品種の中でも有名なのはやはり、男爵・メークイン・キタアカリなどですよね。


・男爵は明治40年頃、アメリカから川田龍吉男爵と言う人によって、イギリスから北海道に導入された『アイリッシュ・コブラー』という品種になります。こういう古い品種がいまだ第一線で活動している例は珍しいことです。水分が少なく、ほくほくした味わいが特徴的です。
粉質で煮くずれしやすく、ほくほくしていて粉ふきいもやポテトサラダ、コロッケなどにぴったり合います。特に関東方面で好まれています。


・男爵の次に多く栽培されているものは、メークインです。メークインは大正6年頃に、イギリスから輸入されました。つるっとした細長い形で、表面に凹凸が少ないので皮がむきやすいです。肉質がきめ細かで煮くずれしにくいメークインは肉じゃがやカレーなどの煮込み料理に向いており、特に関西方面で人気があります。


・キタアカリは、北海道産の新品種です。中身は黄色で程よい甘さがあり、味もしっかりと濃いことが特徴的です。ほくほくしていて煮くずれしやすいので、男爵の扱い方と一緒だと記憶していれば大丈夫です。独特の黄色を活かしてサラダに使われたりもします。


・紅アカリは、昭和59年北海道の農業試験場で、2種類のじゃがいもを掛け合わせて生まれた新品種の一つです。粉質で煮くずれしやすくほくほく感もあるので、男爵の扱い方と一緒でOKです。ビタミンCの含有量は、男爵よりも多く、キタアカリより少ないです。


・シンシアは1997年、キリンビールのアグリバイオ事業『ジャパンポテト』が、フランスで一番のポテト育種会社から導入した新品種の一つです。メークインみたいに表面はつるっとしていて、中身の色は淡い黄色です。シンシアの特徴は、芽が出にくくて長持ちするところや、皮がむきやすいところ、香りが良く味わいもふかいところです。煮くずれしにくいので、煮込み料理に最適です。


じゃがいもの栄養成分の平均値は、

水分が約80パーセント
炭水化物が約18パーセント
タンパク質が約2パーセント
ほかに無機質は、リンとカリウム、ビタミンCが多く含まれています。


このなかでも、意外に特徴的だと思ったのは、じゃがいも一個中の、ビタミンCの含有量の多さです。



目安を置いて比較しますと・・・・・

じゃがいも小サイズ一個に含まれるビタミンCは、ほうれん草中サイズの3分の1束や、トマト中サイズ一個のビタミンCの含有量とほぼ一緒だということです。そのうえ、ジャガイモに含まれるビタミンCは、加熱しても減りにくいという優れた特徴も持っています。使わない手はないです。