普段、鯛ひとつとってみても、一昔前とは異なる状況をよく見かけます。
鮮魚というと、まず頭に出てくるのが鯛という方も多いのではないでしょうか。
日本人は、鯛が大好きですね。文化的にも、昔の書籍に記述されていたりします。
お祝いの席で鯛がふるまわれたり、年末になると、魚屋さんが鯛を焼くのに大忙しになったりします。
でも、この現象は、毎年確実に減ってきています。
TANTO屋でも頻繁に使用しています。しかも、鯛は構造上とてもシンプルですので、魚をさばく練習としても、鯛は模範的な役目も果たしてくれていると思います。 鯛をさばくのは比較的早いほうだと思います。
今日は、そんな鯛について書きたいと思います。
今では、奥様が魚屋さんで鯛を買うときに、魚自体に触れることなんて考えられないですが、一昔前では、鯛を買うときは、サッと背をもって調べていました。鯛の尾を持ってブラブラやると、『素人だな』と見破られてしまうというエピソードもあったりしました。
ちなみに、どうして尾を持ったらいけないのかと言いますと、尾を持ってブラブラすることによって、鯛の身がやわらかくなってしまうのです。
現在、鯛は、切り身でパックに入って売られています。はじめからさばかなくていいし、必要な分を無駄なく買えるので、こんな便利なことはありません。
一昔前は、頭にねじりハチマキをした、声がガラガラのおじさんが、大きな声で魚を売っていました。
ある意味、活気につながっていた経済効果的な部分もあったと思います。
ちょっと振り返ってみただけでも、時代や趣味趣向の移り変わりを感じます。
食卓事情も、本当に激変しました。
それが良いか悪いかということは、また別次元でのお話になってくるのでしょう。
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鯛を買う時のポイントは、目の透き通ったものを選びます。鯛は、一日置きますと、目がにごります。このポイントは、今も昔も変わりません。しかし、一尾丸ごと買うなんてことは、手間も増えますし、現在ではなかなかないと思います。
まとめますと、目のすっきりとした、色の鮮やかな、身のやわらかくない鯛が新鮮です。
味は大きさにあまり比例しません。
鯛の場合は、4キロ近いものでも、大味ということはあまりないです。
鯛は年中手に入りますが、季節でのポイントは、夏場の鯛はあまり美味しくないイメージです。やはり、冬から春にかけてが脂がのって美味しいですね。
養殖の鯛は、一昔前は味が脂っこくてしつこいといわれていましたが、今では当たり前になっています。
養殖の鯛と天然の鯛との見分け方は、ずばり尾ひれの形です。天然鯛の尾ひれは、すーっと円を描いているのに対して、養殖鯛のほうは中央が折れています。
色で天然か養殖か判断するのであれば、養殖の鯛は、天然の鯛に比べて黒っぽい色をしています。本来、鯛は色が綺麗な魚で有名なのですが、養殖ものは黒ずんでいて、一目瞭然です。
養殖の鯛は、どうして黒くなっているのか説明します。
養殖している範囲を大きな網で囲っているわけです。
すると、どうしても鯛は横に移動できません。
縦の深さはまあまああるので、それは移動できます。
その養殖網の上のほうに上がってきた鯛は、日光にあたりやすくなります。
太陽に当たった鯛は、黒くなってしまうということです。
だからと言って黒鯛(チヌ)ほどではないです。
しかし、鯛の色つやが良くて、目が透き通っていたら美味しいのかというと、一概には言えません。
ニュージ―ランドあたりでとれる鯛は、日本近海ものより色はいいのですが味は脂っこいし大味が多いです。
やはり、環境やエサにかなり左右されるわけです。
鯛の仲間は、世の中で200種類以上あるといわれています。
魚の死後硬直は、鮮度を見分ける手がかりの一つでもありますが魚の種類や環境で変わってきます。
サバみたいに、背の青い魚は鯛のような白身の魚より、硬直時間が短いのです。確かに、青魚はもともとの身はやわらかいです。
活ジメ(生きているものをその場でシメること)の場合、自然に死んだもの(ノジと言います)より、硬直時間が長いです。